テレビ番組のインターネット配信が日常化する一方、その裏側にある「膨大なデータ通信コスト」が放送局の財務健全性に暗い影を落としていました。この課題に対処するため、主要放送局と技術プロバイダーが共同で、ユーザーの接続端末同士を直接繋いでトラフィックを相互融通する「ハイブリッドP2P-CDN」システムを開発・導入したことが明らかになりました。
大ヒットコンテンツがもたらす「嬉しい悲鳴」と「財務への打撃」
スポーツ中継の同時配信や、SNSで大バズりしたドラマ見逃し配信のアクセス集中は、広告収入を増やす一方で、CDN(Content Delivery Network)事業者へ支払う従量制のデータ通信費用を天文学的なレベルへと急増させていました。「視聴率が上がれば上がるほど、インフラ支払いで赤字になる」という、放送局のビジネスモデル特有のねじれ現象が起きていたのです。
新たに導入が始まった「ハイブリッドP2P-CDN」の仕組みと成果は以下の通りです:
- エッジ・トラフィック・オフローディング 視聴者がスマートフォンやパソコン、スマートTVで同一の配信動画を見ている際、近隣のユーザーが一時的にキャッシュした映像データを相互に配信(P2P:ピア・ツー・ピア)し合います。これにより、中心サーバーへのアクセス集中を最小化します。
- 完全ブラウザ動作とセキュリティの担保 視聴者側は専用アプリのインストールなどは不要で、WebRTC技術を利用し、ブラウザ内で自動的かつバックグラウンドで安全に相互データ転送を行います。
- 回線費用の約40%カットに成功 超大ヒットドラマの最新話配信時の運用テストにおいて、サーバー負荷を劇的に抑制し、CDNネットワーク料金の約40%に相当するコスト削減を実証しました。
通信事業者(キャリア)との共生
この技術は、放送局の配信コスト削減だけでなく、通信キャリア(NTT、KDDI、ソフトバンク等)のバックボーン回線の負荷軽減にも多大なメリットをもたらします。動画データのトラフィックは日本のインターネット総トラフィックの7割を占めており、その分散処理は社会インフラの維持という観点からも高く評価されています。
ネットワーク工学の専門家は、「このハイブリッド方式は、今後の4K/8K超高画質ストリーミングの普及期において不可欠なインフラ基盤となるだろう」と予測しています。放送局各社は今後、この共同プラットフォームの規格統一をさらに推し進め、アジアを中心とする海外の放送事業者へのライセンス販売も視野に入れています。